「小顔になりたい」「綺麗な輪郭にしたい」というご相談が多いですが、輪郭は骨、筋肉、脂肪、皮膚によって決定されます。最近はいろいろな情報が入手しやすいせいもあって、骨切り手術の具体的な手術法や、ジョウル、メーラー、ナゾラビアル、バッカルなど脂肪のコンパートメントを知っている方も増えてきました。今回は誤解されがちなバッカルファットについてお話しようと思います。

バッカルファットとは

小顔手術でバッカルファットは除去は必要か?

バッカルファットは頬内側の脂肪で奥歯のあたりに位置する脂肪です。図参照。
皮下脂肪が皮膚のすぐ下にあるのに対して、バッカルファットは脂肪層の下の筋肉のさらに下にあります。なので除去する場合は通常、頬の内側の粘膜からアプローチすると容易に到達できます。
脂肪体なのである程度の体積があり、これを取ることで小顔になるかという議論があります。

引用:(a) Buccal fat pad anatomic location; permission granted from Muresan and Matarasso [92]. (b) Harvesting buccal fat pad with minimal discomfort for patients; permission granted from Khojasteh and Sadeghi [11].

バッカルファットを取るとどうなる?

バッカルファットの減量手術は局所麻酔(意識がある状態)で手術できるので、新人ドクターのような比較的経験の浅いドクターでも行える手術だと言われています。
ただし、図を見て分かるようにバッカルファットは頬骨の上下、頬の比較的高い位置に存在しています。口の高さ以上のレベルです。
実例で見てみましょう。

小顔手術でバッカルファットは除去は必要か?

正面と横からのバッカルファットを黄色、無くなると綺麗な輪郭になる範囲を赤にしています。
中央部分でやや範囲が被るものの、ほとんどが脂肪吸引で取れる皮下脂肪の範囲だという事が分かります。

仮にこの方がバッカルファットのみを取るとどうなるでしょうか?画像編集でシミュレーションしてみた結果がこちらです。

小顔手術でバッカルファットは除去は必要か?

ご覧のように頬骨の下のボリュームが減りましたが、バッカルファット下部のボリュームはそのままなので、S字カーブが強くなり頬のコケ感が強くなっただけです。

別の症例で皮膚が比較的薄く柔らかい人ではどうでしょうか。

小顔手術でバッカルファットは除去は必要か?

もともと頬骨の下に影ができるようなタイプの人はコケてより頬骨が強調され、さらにたるんだ印象になります。

『バッカルファット除去と同時に糸』を組み合わせる治療を勧めるクリニックも多いのですが、両方とも局所麻酔でできる術者に取ってお手軽な手術だからです。

1つ1つを見ると、バッカルファットでコケさせた後、下がったボリュームを糸で持ち上げているだけなんですね。糸の効果は6~12か月程度ですので、糸の効果が無くなってくるとまたイメージ図のように変化していきます。なのでいつまでたっても糸リフトを繰り返す、『無限糸リフト地獄』に陥ってしまします。

ちなみにこの2つのケースは皮下脂肪の脂肪吸引を行いました。

小顔手術でバッカルファットは除去は必要か? 小顔手術でバッカルファットは除去は必要か?

それぞれこのような結果です。

皮下の脂肪吸引のみで、お顔全体を見てもバランスよく理想の輪郭になりました。

脂肪吸引はベイザー脂肪吸引で皮膚の引き締めもしっかりしつつ脂肪を減量しています。将来的にたるみにくくもなっています。

バッカルファット除去が適応になる人は?

ではバッカルファットを減らした方がいい人はどういうタイプでしょうか。

2つのパターンがあります。

1つは、頬骨よりも頬骨下のボリュームがある場合はバッカルファットをしっかり取ってもいいでしょう。個人差はあるものの、このような方は大抵がかなり肥満です。下顔面にかけて横幅が広くなるような輪郭の人です。

2つめは、頬をよく噛む人。頬をよく噛む人はバッカルファットの体積が大きい可能性があります。頬の粘膜を噛む人は口腔癌のリスクも高くなりますので、バッカルファット減量の適応になります。歯科で相談すると歯列矯正で改善しましょうと言われるケースもありますが、バッカルファット除去は矯正に比べ手軽で短期間さらに安価でいい治療になりうるケースがあります。

いかがだったでしょうか。

バッカルファットを取りました!という症例でも、脂肪吸引や糸を併用した手術の結果を掲載していることがほとんどです。バッカルファット除去単独の手術症例で大きな変化や、理想の輪郭になるケースをあまり見たことがありません。

バッカルファット除去は比較的手軽にできる割に安易に行われると悪い方向に輪郭が大きく崩れる手術でもあります。

組み合わせて同時にする必要はなく、後でもそれ単独でできる手術なので慎重に考えてくださいね。

一方、海外では…

『美しさ』というのはところ変われば違うもので。。

欧米では逆にコケた頬が美しいとされる文化があります。画像はトルコの医療ツーリズムのホームページでバッカルファット除去手術の宣伝です。
引用:https://www.bodyexpert.online/en/bichectomy-in-turkey

小顔手術でバッカルファットは除去は必要か?

メイクで頬骨下に濃いシャドウを入れたり、コケさせたり、逆に頬骨にヒアルロン酸などを入れてさらに横幅を出したり『Hollywood cheek:ハリウッドチーク』と名付けられるほど人気のフェイスラインのようです。

日本をはじめ、韓国中国のアジア圏では凹凸のない卵型が綺麗かわいいとされるのと比較すると真逆の価値観なのが面白いですね。