執筆者
Lipo Clinic omotesando 院長 福田越
美容外科10年以上で脂肪吸引10,000件以上、豊胸手術4,000件以上の手術経験(2013~2025)
元麻酔科専門医の経験をもとに安全と結果にこだわった手術を提供
2008年 福井大学医学部医学科 卒業
2008年 杉田玄白記念公立小浜病院 初期研修医
2010年 同病院 麻酔科
2011年 豊橋市民病院 麻酔科
2013年 THE CLINIC 東京院 医員
2017年 THE CLINIC 大阪院・名古屋院 統括院長就任
2024年 Lipo Clinic omotesando 開業
学会発表等
2017年 中部形成外科学会「自家遊離脂肪移植の実際-脂肪壊死を避けるための工夫と応用ー」
2018年 日本オンコプラスティックサージャリー学会 「皮膚の伸展不良な組織に対する癒着剥離を併用した脂肪注入」「脂肪注入後の合併症(主に脂肪壊死について)」
2018年 関西形成外科学会 「組織欠損に対する脂肪注入」
2021年 日本形成外科学会総会 「合併症から振り返る,リスクの少ない脂肪注入」シンポジスト
2024年 日本形成外科学会総会 「”たるみ”に対する顔の脂肪吸引とスレッドリフトの併用」
2024年 日本美容外科学会(JSAS) 「脂肪吸引は切開フェイスリフトにどこまで迫れるか」
2024年 日本美容外科学会(JSAPS)「特別招待講演:ベイザー脂肪吸引とスレッドリフトを用いたたるみ治療」
2021年 形成外科系専門誌 PEPARS No.176 「脂肪注入術ー合併症の種類とその治療,予防ー」
脂肪吸引後に起こる事

痛み
脂肪吸引後の痛みは吸引部位、範囲、吸引量によって変わります。
一般的には痛み止めを飲んで強い筋肉痛のような痛みが残る感じです。手術翌日~2,3日がピークで1週間後には痛み止めを必要としない人が多いで感じしょうか。
多少個人差はありますが、10年以上10,000件以上の経験から、痛みの強い部位の順に
太もも > 腹部 > 腰 > 二の腕 > お顔
という印象があります。
こうやって並べてみると吸引範囲や吸引量に比例している気がします。お顔や二の腕よりも下半身の方が吸引範囲は広くなりますし、広くなればそれだけ吸引量も多くなりますからね。
部位別ではこの順番ですが痛みの強さは、痛みに強い弱いなどの個人差、手術する医者の技術、手術に使う道具などによっても変わります。
脂肪吸引は皮下脂肪だけを扱う手術ですが、未熟な医者がその下の筋肉を傷つけると術後の痛みは強くなります。痛みだけでなく重要な血管や神経もあるので重い後遺症や命に関わる可能性も。。
手術に使う道具でも組織のダメージは変わります。当院では最新のPALを使いできるだけ負担をかけないような工夫を行っています。ベイザーをメインで使っていた時よりは圧倒的に一週間以降に「追加で痛み止めのお薬をください」と言われることが少なくなったように感じています。
ダウンタイム期間(痛み)
太もも全周:2週間程度
太ももの一部:1週間程度
腹部:1週間程度
腰:1週間以内
二の腕肩:1週間以内
顔:数日程度
むくみ、内出血
むくみや内出血は一般的に術後数日~1週間がピークで2~4週間程度で落ち着いていきます。
むくみや内出血の程度も手術範囲や吸引量、手術の技術によって変わります。
手術範囲が広ければそれだけむくみは強くなりますし吸引量が多いとむくみの期間も長くなります。
ただ吸引量が多い場合には、吸引で取り除かれたボリューム(マイナスのボリューム)も多いので、むくんでも(プラスのボリューム)見た目はそれほど腫れていないように見えることもあります。
手術が下手で筋肉を傷つけたり、麻酔が不適切だと出血も多くなります。深い部分の出血が表面に出てきてから消失まで時間がかかります。皮膚の血流によるため年齢や体質でも差が出ます。
むくみや内出血に対しては急性期の圧迫やその後のインディバなどの温熱療法や漢方薬が有効です。
術後数日から1週間程度は圧迫することでむくみを抑えることができると言われています。一週間目以降で組織の出血などが落ち着いた時点からは温めることで循環が良くなりむくみの改善が促進されます。
むくみや内出血に対する漢方薬として当院では治打撲一包や柴苓湯を処方しています。たまに強い利尿薬であるラシックスを自己判断で服用する方がいますが、これは痛み止めとの飲み合わせや腎臓に対する影響から主治医に必ず相談してください。
また、むくみの強い時期は皮膚の水分も不足しがちになり乾燥肌になるためボディクリームやオイルで保湿をするといいでしょう。
脂肪吸引後に「水が溜まった」「水抜きをした」という経験談がありますが、何らかの原因で部分的なむくみが引かなくなった状態です。医学的にはリンパ液や血液の成分が塊になった状態で「漿液腫」「血腫」といいます。いわゆるペラペラやカリカリになるような手術で過剰にリンパ管や血管が傷ついて回復吸収が追い付かない場合、体質などで血流が悪く吸収されない場合などに起こりますが、基本的には組織ダメージの強い脂肪吸引をした場合に多い印象です。また、術後の漿液腫や血腫は感染のリスクも高まります。長く残ると内部で瘢痕組織が形成され凸凹になったりします。正しい脂肪吸引であれば基本的に漿液腫や血腫はできません。
ダウンタイム期間(むくみ・内出血)
太もも全周:2~4週間程度
太ももの一部:2週間程度
腹部:2週間程度
腰:2週間程度
二の腕肩:2週間程度
顔:1~2週間程度
硬縮
硬縮(拘縮)は内部の組織が傷ついた後の治癒過程で感じられる症状です。
自覚症状としては、「硬さ」「つっぱり・ひきつれ」「凸凹」「感覚の鈍さや異常」があります。
一般的には2週目くらいから感じられ、3~12カ月程度と吸引量や手術の方法に比例します。
「感覚の鈍さや異常」は基本的には末梢神経が傷ついた症状ですが、末梢神経は回復することがほとんどです。徐々に改善していれば問題ありませんが、数週間全く症状が変わらないのであれば、早めに主治医に連絡してアドバイスを求めましょう。一般的には温熱療法やビタミンB12が回復を助けると言われています。
内部のダメージが大きければ大きいほど治癒までに時間がかかりますので、組織のダメージは最小限に、出血も少なくスマートな手術が重要です。
硬縮(拘縮)の諸症状が気になる方はインディバが有効です。温熱効果で循環が良くなり症状が改善します。同様にお風呂に浸かって軽くマッサージするなども有効でしょう。ただし、マッサージが痛いのであれば控えてください。
正しい脂肪吸引ではおおむね6か月が硬縮もおちつく完成の時期となります。6か月以降も凸凹や硬さが残っている場合には脂肪の取りむらや過剰に傷ついたことによる瘢痕形成を疑います。
ダウンタイム期間(硬縮)
太もも全周:3~12か月程度
太ももの一部:3~6か月程度
腹部:3~6か月程度
腰:3~6か月程度
二の腕肩:2~6か月程度
顔:2~6週間程度
脂肪吸引後の生活
術後ケア
術後にインディバやマッサージはどうですか?と聞かれることがよくあります。
私の結論は「必要なし」です。
術後にインディバを受けることで、むくみや内出血、硬縮が軽くなります。回復は早まりますが、インディバをしたことでより細くなるなどより結果が良くなるわけではないことに注意が必要です。ゴールが変わるのではなくゴールまでの期間が短くなるという効果です。
最近では術前にインディバを受けると脂肪吸引しやすいというような話もありますが、個人的には全く理屈が分かりませんし医学的な根拠もありません。
マッサージについても同様です。硬縮が残っているのであればお風呂で温まった時に軽くもみほぐすことでインディバと同じような効果が得られると思います。ただし術後まだ間もない触ったり押したりして痛みがあるような時期にマッサージをするのは逆効果なのでやめて下さい。捻挫したり頭をぶつけてたんこぶができた時にマッサージして下さいとは言われないと思いますし、する気にもならないはずです。怪我をして炎症のある場所を押したり揉んだりするのは患部を余計に悪化させるだけです。
有効な術後ケアは、乾燥しがちな肌への保湿と、よく食べてよく寝て規則正しい生活をすることです。
食事
術後の食事や水分摂取は重要です。
絶食は論外ですが、基本的には栄養が偏らないようにバランスよく食べましょう。
術後の食事を気にされる方がいらっしゃいます。
脂肪吸引で組織がけがをしているのでタンパク質の摂取は推奨されますが、取りすぎは腎臓などに負担をかけますのでいつもより少し意識して食べる程度で良いでしょう。野菜や果物に含まれるビタミンや抗酸化物質も重要です。ナッツやオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸も組織修復に重要と言われています。食欲がない場合はサプリで補うことも一つの手段です。マルチビタミン、マルチミネラル、必須アミノ酸などバランスよく。
また、お酒や塩分もむくみを助長し長引かせますので注意が必要です。
むくんでいる期間は、難しい言葉でいうと「血管内脱水」の状態です。体の水分がむくんでいる所に集まってしまうため、血管内つまり血液は水分を取られてドロドロ気味の脱水状態になります。なのでむくんでいても水分摂取を十分に行いましょう。トイレの回数が少なかったり、尿の色味が濃い、立ち眩みがする、心拍数が早いなどの症状は脱水のサインかもしれません。組織の修復にタンパク質は重要ですが、脱水状態でタンパク質を過剰に摂取するのは腎臓に負担をかけるため注意が必要です。
運動
広い範囲の脂肪吸引でも翌日から家のことなど日常生活は可能です。
翌日から多少痛くてもできるだけ立って歩くことで回復が早まります。
逆にお休みを長くとっている場合でも、ある程度の安静は必要ですが、寝たきりの生活は避けてください。先述したように血管内脱水+手術後は血が固まりやすい状態になっています。同じ姿勢で長時間いることで血栓(血の塊)ができやすくなり、肺塞栓(エコノミークラス症候群)のリスクが高まります。
喫煙
喫煙で良いことはほぼありません。
喫煙による血管のダメージや毛細血管の収縮は、むくみや内出血だけでなく組織の回復を遅らせます。
術後の喫煙で漿液腫や血腫などのリスクも高くなります。
その後の生活

脂肪吸引は体重を減らす手術ではなく、落とすのが難しい部分をデザインする、調整する手術だと考えていただくといいでしょう。
肥満の方は脂肪吸引によって見た目が良くなったからと言って健康になるわけではありません。
脂肪吸引した部分は脂肪細胞自体が減ることで、体重が増減してもあまり影響を受けなくなりますが、脂肪吸引したら安心だとは思わずに、手術をきっかけにそれからの生活も意識する必要があります。